恋の絶頂に含む崩壊の情念。
日に日に、理性では御すことの出来ないまでに過剰になる愛。
ペロニーテ火山の溶岩塔が、火砕流となる恐れに−−−おののく理性。
この歌は、激湍の火砕流を秘めながら、美しい格調高い端麗な品格を持つ。
シンビの花は、蕾から花開くまで約60日を要する。
この日々は作る者にとっては、花の激しさをよそに一日千秋のの想いである。
だが、シンビの蕾の内部では、この歌のような情念が醸成されている。
花蕊は−−−ぺロニーテ火山のドームのように、しだいに大きくなっている。
大型シンビは、ステムの下の花から咲き始め、全部の花が咲くのに約1ヶ月。
この花の真っ赤に燃える10数輪の花の重なりを見ていると−−−
激しさに押されて、シンビに、葉も、バルブも、根もあることを忘れてしまう。
「受粉できないのであれば、この命枯れてしまえ−−−」
この花は、闇が忍び寄る時刻になると、炎が熄がつくようにみえる。
蝉のこゑは冥きものかな命ひとつ
産み終ふるまで耳朶を打ち行ゐき 河野裕子
女は裡側に無数の卵を持っている。
シンビは数十万の種子を生む能力を秘めている。
華には生と死が同じに孕む冥き闇がある。
この満開の花のなかに、自虐の熄滅の炎と「産む性」の冥き闇を見る。
そして、内親王と定家との妖しい恋の激しい火砕流を見る。
宇井 清太








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